本院におけるNIPPVプロトコールと使用経験
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社会福祉法人大阪暁明館病院 呼吸療法科 副看護部長
枚本 保, 浅岡 和正

 NIPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation)の本院での取り組みは1993年4月にNIPPV開発主旨であるSASに対する治療ではなくCOPD患者の呼吸筋疲労の改善を目的とした治療に始まった.以後そうした患者の酸素化及び換気障害治療やCO2ナルコーシス傾向患者の維持改善治療をはじめ,救急領域では気管支喘息重責発作,COPD急性増悪,呼吸不全をともなう急性心不全患者等の呼吸改善治療の第1選択として又,再挿管の回避治療,人工呼吸器からのウイーニング,呼吸運動療法における呼吸筋疲労の改善等々幅広く用いている. 以下,現在の本院での治療プロトコールを再検証する. まず,NIPPV治療に対する一連の業務の流れは,次の通りである.

適応絶対条件

  1. 患者自身が本治療に対し理解協力できる.
  2. インターフェイスの不備により直ちに生命に支障を来さない.
  3. 意識障害症例,又呼吸不全が重症化する可能性がある症例にあっては,常時監視評価できる環境下で行う.

適応症例

  1. 慢性呼吸疾患群にあっては,呼吸筋疲労の臨床的兆候の表れているもの,もしくは呼吸筋疲労又は呼吸筋機能不全の原因となる問題や病態生理を持つ疾患,高炭酸ガス血症を伴う肺胞低換気障害や器質的又は中枢性の気道閉塞障害の他,COPD患者の呼吸運動療法後の呼吸筋疲労の予防,早期回復等
  2. 急性呼吸疾患群にあっては,COPD急性増悪患者で人工気道下での人工換気治療を避けたい症例,喘息重責発作患者の換気補助治療,呼吸不全を伴う急性心不全症例や抜管後の換気障害等の他,人工呼吸からの離脱後も換気補助が必要と考えられる疾患のウイーニング手法等

不適応症例と危険性

  1. 本治療にあたって理解の得られない乳幼児や心身障害,不穏,興奮のある患者
  2. 気胸,肺縦隔症,膿胞性肺疾患,出血性肺疾患の未治療患者
  3. 陽圧換気による低血圧症
  4. 極度のマスクアレルギー患者
  5. 気道分泌物が多量にある患者は誤飲の危険性とそれらの抵抗により換気量に影響を及ぼす可能性がある.
  6. 上部消化管へのエアーの流入又,胃内容物の逆流を起こす危険性がある.
  7. マスクワイッテイングの不備によるエアーリークにより角結膜乾燥をきたす危険性がある.
  8. 入眠時開口癖のある患者では換気量に変化を及ぼす可能性がある.
  9. 患者によっては治療に対し不穏,興奮をきたす可能性がある.

 NIPPV療法の適正な使用は,患者にとって多くの利点を生み出すと考えられる. QOLの制限を縮小し,気管内挿管に伴う二次感染の回避,人工呼吸治療とともに使用される鎮静剤を削減できる等の他,慢性疾患群にあっては在宅生活を送りながらその疾患の維持,改善が図れる.しかし本治療を効果的かつ安全に遂行するためには,本院での使用経験から基本的なプロトコールの整備と熟知した医療スタッフのチーム作りが不可欠であると考えられた.